2010年1月28日木曜日

“村の百科事典”をつくる

月曜日から火曜日にかけて、4つの村に行ってきました。
そのうちの一つ、チェンマイ県最北のメーアイ郡にある、ビルマ国境の山稜を望むサンパカー村での活動の様子を紹介しましょう。
この村はチェンマイ市から北へ約170km、車でおよそ3時間。

GPS(全地球測位システム)を使って村人と一緒に歩いて作ったコミュニティー林の地図は既にできており、まずはその読み方を村人に説明しました。

この日のメインは村人やお坊さん、小学校の校長先生などに集まってもらい、村の歴史や村で見られる生き物の情報を集めること。
歴代村長の名前、森林破壊や野生動物が消えていった様子、電気や電話、自転車やオートバイ、トラクターが入ってきた年、農作物の変遷、学校、寺院の設立年などを思い出してもらい、A4の紙に大きく書いて、みなが見えるように床に並べていきます。
字が読めない人がいる場合もあるので、描けるものにはなるべく絵も入れていきます。

“詳細かつ厳密な”とまではいきませんが、おおよその村の歴史を浮き上がらせることはできます。
どこでも町史や村史が残る日本と違い、北タイの村ではこういった記録がほとんど残っていません。
村おこしの計画を立てようとしても、子どもたちに村の出来事を伝えるにも、こういった記録がないために、村人同士で情報を共有することが困難となっています。

“生き物の情報”とは、野生の動物や鳥、魚などのうち、かつては村にいたけど今はもう見ることが出来なくなってしまったもの、今も見ることが出来るものに分けて記録していきます。

私たちが主に活動するファーン川流域では、おおよそですが、30年ほど前を境にどこでも野生動物が激減する傾向を見て取ることができます。
このわずか数十年の間に消えてしまった野生の動物の種類は、どこの村でも二桁にのぼります。
ズラリと並ぶ、今はもう見ることができなくなってしまった生き物のリストに、森を守ろうと取り組む村人たちも、考えるところが少なくないように思えます。

生き物だけではありません。
みんなで出し合った出来事を並べてみると、ここ数十年間の村のくらしの激変は一目瞭然。

紙に書いた情報は、村人が1週間ほどかけてまとめます。
ワープロ打ちする場合もあれば、村長直々に手書きする村もあります。

コミュニティー林を含む村の地図、歴史、生き物の一覧は、小学生たちが描いた村の絵を添えて冊子にまとめられ、村の役員や学校、寺や教会に配られます。

これをLinkでは“村の百科事典”と呼んでいます。


    ① おおよそのテーマごとに情報を聞き取り、年号順に床に並べていく(サンパカー村)




  ②「この村で最初のバイクは、タイ仏歴2512年(西暦1969年)にポンパンさんが買った“HONDA50”」という意味(サンパカー村)




          ③コミュニティー林の地図と“村の百科事典”