2010年2月24日水曜日

20年目の再会

日本は各地とも、やっと少し暖かくなってきたようですね。

チェンマイですが、早朝はまだけっこう涼しいですが、日中はかなり“酷暑”という状況に近くなってきました。
なんせ、雨がぜんぜん降りません。
山では、あちらこちらで火事が起こっています。
来る日も、来る日も、晴ればかり。
空はホコリと煙で霞んできました。
それでも日差しはきつく、屋外に出ると肌がチリチリします。
長袖は必需品!

さて、きのうはデンムアン村に行ってきました。
Linkの活動地はチェンマイ市内から北へ150km前後のファーン川流域に広がっているのですが、この村は唯一チェンマイから南々西の方向にあります。
市内から約35km、車で1時間ちょっとです。
実は昔、私が大学院生だったころに調査でお世話になった村の隣村でもあります。

村長の自宅に数人の村人に集まってもらい、聞き取りをしました。
集めたのは村の歴史の概要や、村の周辺にどんな生き物がいて、またどんな生き物がいなくなってしまったかという情報(1月28日の“きむろぐ”参照)。

とっても美味しい揚げバナナをご馳走になりながら、和気あいあいと聞き取りは進んだのですが、驚いたのは、30代の村長の父親にあたる老人が私を覚えていたこと。
「どこで会ったかな」というので、「20年前に隣村のミー村長の家に数ヶ月いたことがあります」というと、事もなげに「そうだったか」と一言。
印象的だったのは、他の人のように「日本人かどうか」などの細かいことは一切気にもせず、すぐにまたやりかけの家周りの作業に戻っていったことでした。

私のいた村からみるとデンムアン村は街と反対の方向にあり、しかも3km近くも離れていたので、滅多に訪れることはありませんでした。
そんな村で、20年も前に会った私を覚えている人がいる。
どこか嬉しく、なんとも言えない不思議な気持ちにさせられたのでした。


村人数人と縁台を囲んで聞き取りをした時の一コマ。真ん中の人が村長。右にできたての揚げバナナ。


村長の家の前で撮った1枚。20年前と違うのは、道路が舗装されたこと。

2010年2月7日日曜日

パカニョーの結婚式

きのう、Linkのいちばん古くからの活動地であるホイポン村の結婚式に出てきました。

金曜日にメーアイ郡のサンパカーという村で話し合いを終えて、ホイポンには夕方6時ころに着きました。
新婦はホイポンの人ですが、新郎はバンターという町に住んでいる同じパカニョーという民族の人だそうです。

新婦の家の前では早くも豚をつぶして酒盛りが始まっていました。
満天の星空の下、ビールと手作りの焼酎をこれでもかというほどご馳走になりました。

翌、土曜日。
朝、教区の神父を迎え、教会の鐘が鳴らされて、式は9時半ころにはじまりました。
神父さんは私の記憶違いでなければ確かイタリア人ですが、式はすべてパカニョー語で行われます。
ホイポンはカトリックの村で、新郎も同じくカトリックだそうです。

まず新婦の家から、子どもに続いて新郎新婦、参列者の行列が教会に向かいました。


教会に入ると正面のイエスの絵に向かって右側に新郎とその友人代表、左側に新婦とその友人代表が立ち、後ろには参列者たちも同じように右半分に男性、左半分に女性が並びました。



新郎新婦は民族衣装。
パカニョーの場合、伝統的には未婚の女性の衣装はワンピースです。
しかし結婚式からは、既婚女性用の上下で別れた、織や刺繍の凝った衣装に独特の頭巾(ずきん)をつけるようになります。
ただし結婚式では純白のベールをかぶります。
新郎は白いワイシャツの上に民族衣装を着ています。

式の最中、騒ぐ子どもがいました。
父親がこの小さい娘を抱きとめると、娘の強烈な平手打ちが父親の右頬を見事にとらえました。
一瞬、みなの意識がこの親子に集中し、また式のほうに戻って行きました。

咳き込む年寄りがいました。
痰が切れると窓際まで行って、この式場のある2階の窓からペッ。
周りの人が気遣って腕を支え、もとの位置に戻るのを手伝いました。

「汝はこの者を終生・・・」という神父の問いに新婦がモジモジすると、厳かに式を進めてきた、一見ちょっと怖そうな神父が、「ん? どうなんだ?」と、ドングリのような大きな目をさらに見開いて問い直しました。
会場がどっと笑いに包まれ、「しっかりしろ」ってな感じのヤジが飛びました。




民族衣装を着た新婦の友人が一生懸命デジカメで写真を撮り、指輪の交換があり、聖体拝領があり、この間、何曲もの讃美歌が歌われ、式は小一時間で無事終わりました。
厳かであり、でも同時に何かとても微笑ましい、等身大のというか、とっても親しみの持てる式でした。

式の後、新郎新婦が神父や親戚一同とひとしきり記念写真を撮り終えると、舞台は教会のすぐ横にある新婦の実家に移され、食事がもてなされました。
何種類もの豚の手料理に、酒もふんだんに出され、挨拶して回る新郎新婦にご祝儀が渡されていきました。

村の結婚式といっても、今はいろいろです。
今回はとても親しくしている家の娘さんの結婚式で、私はちょっと緊張していたのですが、とてもいい結婚式でした。
この式のために町から戻ってきた人たちもたくさんいました。
前の晩から和やかで楽しげな雰囲気が村を覆い、とても自然な感じの式となりました。
村中が、ごく普通に、新しいくらしの第一歩を踏み出そうとするふたりを祝福し、ともに感動し、いい酒に酔っているようでした。

私たちも、温かい気持ちをたくさんもらって帰途についたのでした。